みなさんは「Uボート」という映画を御存じでしょうか。1981年に製作された潜水艦映画の名作です。
先日、ふとそのワンシーンを思い出しました。
映画のクライマックスでは敵の攻撃によって艦が損傷を受け、海底から浮かび上がることができなくなります。
そのままでは全員の死が確定する、という状況の中で、何とか浮上する努力が続きます。そして針金さえあれば修理が可能と分かりますが・・・
たとえ技術の粋を集めた巨大な鉄船でも、ありふれた品物が欠けたせいでたやすく機能を失う、という象徴的なエピソードです。
バーを交換したらいつも通りに削れなくなった
さて下の写真はスワデンタルの主力加工機、350i用のバーの先端部です。この2つは先端の形状が多少異なりますが、径は同じでカタログでは相互に交換して使える、とされているものです。
ところが今まで使っていた上のバーを下のバーに変えたところ、マージン部のチッピングが多発し、内面適合がきつくなるなど今まで通りの加工ができなくなりました。
これらのバーは双方ともちゃんとした350i用のミリングバーで、しかも下の現在問題が出ているバーはアイメスアイコア社の提供する純正品です。
安い互換品ならまだしも、まさか「メーカー純正品」に交換して問題が発生するなど予想もしませんでした。
この手のひらに載る小さなバーの先端という、たったそれだけのものがミリングマシーンの仕事の結果を左右しているのです。
すべてはバーの先端を対象に当てるため
しかし思い直してみると、加工中の350iが加工対象に触れるのは、ディスクの固定部分を除けばバーの先端のほんのわずかな部分だけです。
つまり大きな本体も、非常に精密な制御も、本体を安定させるための重い花崗岩の板も、その性能のための数百万円の費用も、すべてはそのバーの先端のためだけにあるのです。
歯科用CAD/CAMにおいてバーの重要性は十分に承知しているつもりでしたが、今回の件で改めて機器の性能が非常に繊細なバランスの上に成り立っている、ということを認識しました。
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