スワデンタルCAD/CAMセンターの製品は各方面から大変好評をいただいています。
そのおかげで現在ではCAD/CAM冠とジルコニアを合わせて年間約50,000本の加工を行っています。
10年前のCAD/CAM専属の歯科技工士が私一人だった頃と比べると、20倍以上のひらきがあり、まさに隔世の感があります。
この爆発的成長の原因は、人やモノなど数多くの要素が影響しあっていますが、その中から設備面から挙げてみると、ある一つの機器を導入したということは絶対にはずすことは出来ません。
その機器、いわばスワデンタルの秘密兵器ですが、それは「ファイルサーバー」のことです。
「ファイルサーバー」とはファイルの共有を専門に行うコンピューターのことで、このコンピューターと回線でつながれた機器間ではファイルの移動が簡単にできるようになります。
ティアックオンキョーから導入したファイルサーバー「suwa-nas01、02」
「ファイルサーバー」とは歯科技工所ではまったく聞きなれない名前ですが、なぜCAD/CAMの技工において、それほどファイルサーバーが強力な武器になりうるのでしょうか。
オープンシステムと歯科技工所でのサーバーの威力
サーバーの重要性が分かるためには、歯科用CAD/CAMのオープンシステムということに注目する必要があります。
歯科用CAD/CAMは何かの一つの機械を指すのではなく、いくつかの機器が組み合わさって一つのシステムを形作っています。
いくつかの機器とは大きく分けて「スキャナー」「CADソフト」「CAMソフト」「加工機」の4つです。
オープンシステムとはこの4つの組み合わせをメーカーの垣根を越えて自由に行う事が出来る製品の事です。対してのクローズドシステムとはこの組み合わせがメーカー指定でなければ使えない製品の事です。
これは色鉛筆で例えれば、赤や青といったスター選手は、黒やおうど色などのマイナー組と比べて減りが早く、すぐに買い足す必要が出てきます。
クローズドシステムとはこの場合、同じメーカーの同じ鉛筆を買い足さなければ絵が描けない、という制限がある製品ということです。
オープンシステムとはこれとは逆に、別にどこの鉛筆と組み合わせても絵を描けますよ、ということで、我々一般の生活の感覚で言えば、こちらの方が当たり前です。
初期の歯科用CAD/CAMはクローズドシステムが普通でした。これはおそらく初期の限界値の低い機器類でトラブルを未然に防ぐためであったと思います。つまりメーカーが検証しきった安全な使用法に限定する目的でこのような措置が取られたのだと思います。
そしてCAD/CAMが普及し始めた2013年頃からオープンシステムであることを謳う機種が多くなります。
CAD/CAMの普及に伴って歯科技工所内に色々なメーカーの機器やソフトが入り乱れて存在するようになりました。当然我々はこれらの非常に高額な機器を無駄にしたくないので、なんとか組み合わせて使おうとします。そこでメーカの垣根を越えて使える、という事が非常に需要が高くなりました。
その当時のスワデンタルでもスキャナーとCADソフトはパナソニックデンタルのC-Pro、CAMソフトと加工機はクラレノリタケデンタルのカタナを組み合わせて使用していました。
この、ある物を組み合わせて使える、という事は節約の観点では大変重要なことですが、オープンシステムの利用という事では2次的で消極的な利用法だと思います。
ではさらに一歩踏み込んでオープンシステムの積極的な利用法とはどのような物でしょうか。
それは「そこにあるもの」で組み合わせるのではなく、「意識して性能の良いもの」を選んで組み合わせる、ということです。
つまり赤は赤の発色の素晴らしいメーカーの鉛筆を、青は青が得意な会社で、というように最高の製品を選り集めて色鉛筆のドリームチームを編成する、ということです。
ところが歯科用CAD/CAMのオープンシステムというのが機種によって幅がまちまちで、国語文法的には確かにオープンだけれども、実際にどれだけオープンかというと疑問な場合があります。
それは機器間での相性が悪くてフリーズが多発したり、確かに利用は出来るけれど、利用するために非常に複雑な手順が必要だったりしました。
デンツプライシロナのinEosX5が非常に優れたスキャナーだと判明した際にも、そのための面倒な操作とバグのリスクのために、同僚たちは実際の使用にかなり冷めた反応だったことを思い出します。
この歯科用CAD/CAMのオープンシステムの積極利用を実際に有効にするために、接続を専門とする機器であるサーバーの存在がとても重要です。
スワデンタルCAD/CAMセンターの主要な4つの設備は、正確度が最高のスキャナーであるinEosX5、設計力が最高のCADソフトのEXOCAD、3Dデザインラボ上出氏が設定した計算力が最高のCAMソフトMILLBOX、加工力が最高のi-mes i-core社の加工機、というおそらく現行の機種では最も強力なものを選り集めた、スワデンタルだけのオリジナルの組み合わせです。
このように製造メーカーも取り扱い代理店も全くバラバラの組み合わせなのですが、ファイルサーバーで連携することで、一つのシステムとしてトラブルなく快適に運用が出来ています。
つまりスワデンタルCAD/CAMセンターの強さの秘密の一つは、ファイルサーバーを使ってCAD/CAMのオープンシステムのメリットを大きく生かしている、という事なのです。
現在スワデンタルCAD/CAMセンターではデザインやCAM計算など合わせて40台弱のコンピューターが稼働しており、そのすべてがファイルサーバーとつながっています。このサーバーを経由しないデーターで製作されるものなど1本もない、と言ってもそれは決してオーバーではありません。
物理サーバーの問題点
しかしこれだけ役割が大きいとある恐れが出てきます。それは「いつかこれが故障するのではないか」、という恐れです。これが現実になればCAD/CAMセンターは大変な事態となりますが、サーバーが実体のあるコンピューターである以上、いつかそうなる可能性はゼロではありません。
また現行の物理サーバー(後で触れるクラウドサーバーに対する言葉)の問題点は他にもあります。
その一つはこのサーバーとケーブルがつながっている場所では機器の連携をとることができますが、そうでない場所では他の営業所はもちろん、たとえ隣の本社であってもファイルのやり取りができない、という事です。
さらには利用の方法がファイルのやり取りに限定されていることも問題です。
そこでスワデンタルではこれらの問題を解消して次なる段階へと進むために、この8月からクラウドサーバーを導入しました。
スワデンタルボックスの登場
クラウドサーバーとはインターネット回線を通じて専門の会社のファイルサーバーを利用することです。
この場合ではインターネット回線さえつながっていれば、他の営業所はもちろんスマホからでもサーバーのサービスを利用することができます。
またその利用もファイルの交換だけでなく、メーラーやチャットの機能もあり、社内の連絡用のツールとして使う事が出来ます。
さらにこういったファイルのやり取りや連絡の記録が確実に残る、ということも我々のような多人数の技工所には見逃せません。それは今後はケースを送った、送っていないという種のトラブルが激減するという事です。
また機器の故障のリスクも我々が管理する物理サーバーよりは(時々ニュースになるので全くのゼロではありませんが)はるかに安全です。
一般の企業ではこの種のサービスを利用することはもはや当たり前で、現代においては会社というものは、各種のデジタルのデーターをいかに確実に、そして早くやりとりするか、ということは欠かせない様です。
我々CAD/CAMセンターに勤務する歯科技工士はそういったサーバーとつながることの便利をよく知っていますが、それを全営業所、全社員へと広げることができるようになります。
今後の新しい可能性
またこの4月からCADの技工のみ、自宅などこれまでの歯科技工所の基準に満たない場所でもリモートワークが可能になりました。
ただしリモート先と会社とのインターネットを通したやり取りには、セキュリティの確保された方法のみ使用することが定められています。
スワデンタルボックスはもちろんこの基準を満たします。
今はコロナ第7波の真っ最中で、スワデンタルの社員にもとうとう感染者が出ました。幸いなことに社内クラスターのような状況は避けられましたが、今後コロナ関連がどういった展開を見せるのか全く予断を許しません。
また近年の歯科技工士の志望者は全国的に女性の割合が急増しており、我々企業には子育てをしながらの働き方の整備が求められています。
このような場合のリモートワークを有効に機能させためには、クラウドサーバーの運用のノウハウは今後歯科技工所に絶対に必要なものになると予想されます。
朝倉社長がよく話すのが、以前スワデンタルの事務に初めて技工物の管理ソフトを導入した際の事です。
現在ではもはやそのようなソフトを仕事に使用しない、などという事は想像もできませんが、導入してすぐには「手でやった方が早い」と抵抗があったというのです。
つまり新しい物はたとえ優れたものでも、既存のものと入れ替えるという事はかなり抵抗のあるものなのです。
スワデンタルのクラウドサーバーの「スワデンタルボックス」もこのような抵抗が当然あると思います。そこでとりあえずは現在の物理サーバーの機能を一部入れ替えていくことで、徐々に使っていこうと考えています。
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