top of page

歯科技工の最新鋭に触れよう。

9月2日と9日の2日間を使って、新横浜歯科衛生士・歯科技工士専門学校の「CAD/CAM特別授業」をスワデンタルCAD/CAMセンターで実施しました。



これは歯科技工士養成校の学生を対象に、CAD/CAMの技工の「実際」を体験してもらう事で、自分たちでも十分やれるんだという自信をつけてもらおうという取り組みです。

この取り組みは、われわれが普段使用している機材を使い、実際に受注した臨床(複模型)の技工物を製作することで、疑似的に我々の日常の業務に極めて近い体験をしてもらいます。


またこのCAD/CAM特別授業と同内容のものを他校の生徒にもインターンとして実施していく予定です。詳しくはサイトをご覧ください。


実習の模様。まず我々がやって見せます。

実習で製作したCAD/CAM冠。

CADの優位性はこのような前歯部の1歯欠損にあるのかもしれません。今日初日の学生でもCADを使用すれば非常な経験を要する「シンメトリー」なクラウンを製作できます。

実習で製作したCAD/CAM冠。小臼歯。


現在「最も求められている技術」


近年歯科用CAD/CAMという分野は非常な発展を見せています。ごく短期間の内に新しい機種が次々と発売され、機器が更新されるにつれて性能がどんどん良くなり、さらに加工できる対象も増加しています。これに伴って歯科医療での利用も拡大しており、1例をあげるとスワデンタルでの売り上げの半分をCAD/CAM関連補綴物が占めるようになりました。


当然、歯科技工所の現場でもこのCAD/CAM関連の技術が非常に需要が高まっています。たとえば2021年度の歯科技工士実態調査では、継続して学習したい分野として50.1%もの人が「CAD/CAM技工」を挙げていて、これが第1位となっています。



歯科技工の花形である「口腔インプラント」「歯科審美」はそれぞれ16.5%、21.0%となっていて「CAD/CAM技工」と比べるとその割合は低くなっています。


CAD/CAMを勉強する事の難しさ


このようにCAD/CAMの技術が求められていながら、じゃあ皆で勉強すればいいじゃないか、というような状況にならないのは、歯科用CAD/CAMの教育にある種の難しさがあるためです。

今回のような特別授業を教育機関ではなくスワデンタルのような歯科技工所で行う背景にも、実はこの「歯科用CAD/CAMに関する教育の難しさ」があります。


この難しさがあるために、非常に重要な技術であるにも関わらず最近の新人技工士は歯科技工士学校では歯科用CAD/CAMは触れる程度で、技術的にはほとんどまっさらな状態で就業することになります。

そして結果としてCAD/CAM関連の技術を身に着けるのは就職してから、となるので、歯科技工所には「人を教育する」という役割が前時代よりも強く求められていることも事実です。


思えばこの現場と学校のギャップこそCAD/CAMの技工の真の問題点なのかもしれません。


ワックスアップや人工歯排列といった従来の技術では、学校の実習と職場の業務が一致していたので、学生が就職後の自分を想像するにも、技工所が学生の技量を捉えるのにも特に問題はありませんでした。


ところがCAD/CAMの技工では職場で触って初めてその適性が試されるわけで、このギャップを埋める何らかの取り組み、つまり今回のような歯科技工所のCAD/CAM設備で行うインターンのような取り組みは、今後ますます重要になっていくと思われます。


さてここでそのCAD/CAMを教える役割に取り組む一人として、CAD/CAMの教育に関する難しさについて考えてみたいと思います。


CAD/CAMの教育を難しくしている「もの」


まずCAD/CAMの教育を阻む要素として、


①機器の更新が早い。

②技術が機器に付属している。

③機器が非常に高額である。


という事が挙げられると思います。これらの特徴はCAD/CAMに当然備わっている性質のものです。


①と②が技術の伝達にどのように影響するかを皆にお伝えするには、私自身が経験した事象が一番わかりやすいかと思います。

私は2008年からCAD/CAM専属の技工士をしていますが、これまで何度機械の更新があったかを指折り数えてみますと、この期間中になんと6回もの機器の世代交代を経験しています。


これらの世代にはそれぞれに最善の品質の技工物を作り出すための、機械の使いこなしやコツが存在していました。これらのコツやノウハウは日々の業務を洗練しながら長い期間を経てやっと獲得できる、という性質のものですが、機械が更新されるとこれらの物はほぼチャラになり、再びゼロに近いところからまた機械の使いこなしを再構築する、という事の繰り返しでありました。


これを身近な例で探すと、スマホやゲーム機の場合がその更新のペースといい、操作への慣れのやり直しといい、攻略法や裏技があってもそのソフトに限られる点といい、かなり近いものがあります。


つまりCAD/CAMの技工の技術は「設備に付属している」という性質を持ち、その会社のそのシステムのこのソフト、といった極めて限定的な範囲でしか有効でない場合が多い、ということです。


これまでの技術である歯型彫刻やワックスアップ、人工歯排列といった技はいったん身に付けさえすれば汎世界的に通用していたのと比べて、この新しい技術のなんとストライクゾーンの狭いことでしょうか。


このように限定的でしかもすぐに賞味期限が切れてしまう知識というのは、教育機関などで広く広めるには向かないのは明白です。


では新しい世代の機種が登場するたびにどんどん買っていけばいいではないか、というのを阻むのが③の機器の高額さです。

特に①の更新の早さと③機器の高額さとによってCAD/CAM機器の導入のタイミングが分からず、デジタル化への躊躇があるという事は良く言われています。


なぜ技工所の機械を使うのが最善なのか


学校に設置してあるCAD/CAM機器を見せてもらいますと、スワデンタルCAD/CAMセンターで2014年頃に使用していたものと同じで、3世代前の製品に当たります。もちろん当時のコツを思い出して、この機械での最善をレクチャーする、という事も可能です。そして自分の置かれた環境で最善を追求する工夫、ということは歯科技工の職務上、最も重要な仕事のエッセンスでもあります。


ところがCAD/CAMの技工における新しい機械の機能の便利さ、作業の正確さ、時間の短さ、操作の楽さと言ったら、そういったものを完全に無効にするほど刺激的です。

また新しい機械類の効率的な運用の追求と、そのための投資では決して人後に落ちないという自負がスワデンタルにはあります。


設備の差によって就職した先で実際に行使できないにしても、この最も「新しい形」を知っておく事の方が若い人たちにとって有効と考え、それには今の我々の仕事を体験してもらうのが一番という事になりました。





スワデンタルの技工士への影響


この取り組みによって学生さんたちに良い影響があったことを願うばかりですが、実は我々スワデンタル技工士側に限って言えば大変良い影響がありました。


歯科技工士というのはずーっと同じ作業を毎日続けるといういわばマンネリの状態で仕事をすることが多く、CAD/CAMセンターもこの例に洩れません。

学生を迎えて技術をレクチャーするという体験は、この日常を打破するのに十分な刺激がありました。


また歯科技工士の職業上の喜びは「自分の技や知識が他者の役に立った時」にあると思います。多くの場合この瞬間は、自分で作った補綴物のセット立ち合いの際に訪れると思いますが、今回の取り組みからも学生さんたちの反応から我々は十分、それを感じることができました。


また人に教えるとなると、自分の技術へ向ける目も慎重にならざるを得ません。いつもは何となく作って、なんで出来上がっているのかわからないが、何となく出来ている、という部分も多少はあるものですが、これらあいまいな部分も人に伝える場合はしっかりと言語化する必要があります。結果的に自分の技術を整理して向上させる機会になりました。



つまり我々スワデンタルの歯科技工士たちもこのイベントをとても楽しんでいた、という事です。


そしてもう一つ、この機会に部屋が整理されてきれいになりました。


スワデンタル側の今後の課題


この取り組みが継続していくために今後の課題も考えてみたいと思います。


まず実施してみて「もっと学生と社長とが接する機会を持てばよかった」ということに思い当たりました。



歯科用CAD/CAMを歯科技工所で有効活用するためには、これまでの技工とは違ったスタンスが必要ですが、そういった技術的なものと並行して、絶対に欠かすことができないものに「事業計画」があります。


実は弊社代表の朝倉はこの歯科用CAD/CAMの「事業計画」を含めた歯科技工所経営の日本でも有数の名手であり、これらの新しい経営手法は、これからの時代の若い技工士は、CAD/CAMとは切っても切れない仲になる以上、必須のものになると思われます。


これまで書いたように歯科用CAD/CAMの使いこなしの要点に「機械の更新」があります。歯科用CAD/CAMが将来、ある一定の水準に達してそれ以上進化しない、というようなシチュエーションになれば、機械の更新の重要性は低くなりますが、現在の発展の勢いでは当分、その地点にはたどり着きそうにありません。


したがって事業の有効性を保つためにCAD/CAM機器を最新の状態に更新し続けることが必要ですが、このために、どのような機械を導入して、どのように収益を上げ、いつまでに更新するかという機械の「事業計画」が必要なのです。


もしこれを持たない場合、導入直後は最新の状態ですが、更新が計画されていないため、しばらくして性能的な優位を失っていくことになります。

このことは多くの歯科技工士養成校で歯科用CAD/CAMの教育の停滞の原因になっていると想像します。つまりこれらの学校はCAD/CAMに関する事業計画を持っていないか、持っていたとしても会社としてそれを実施して収益を上げることができないために、機械の新規導入も機器類の更新も双方難しくなるのです。


歯科用CAD/CAMは経営とセットになって初めて有効に機能する、と言い換えることも出来ます。この経営の第一人者と学生さんとが接することのできる機会はそう多くありません。その意味ではあの日あの場にいた歯科技工士の中では、朝倉社長が最も希少な存在だったでしょう。


来年度以降の実施では、ぜひ学生さんたちには実技と合わせて、朝倉社長から経営に関する知識を少しでも吸収してほしいものです。


Commentaires


bottom of page