今回はとても珍しい物をお見せします。
このCAD/CAM冠用のブロックの番号を見てください。なんと000001、つまり日本で一番最初の製品です。
CAD/CAM冠用のブロックは保険申請のために厳しい製品管理が行われていて、必ずロット番号が記載されています。
保険適用以来8年を経過して、通常はこのような桁の大きな番号になっています。
スワデンタルでは数多くのCAD/CAM冠を製作している関係上、今までたくさんのブロックを見てきましたが、このような若い番号のものは初めてです。
アベンシアブロック2OEの加工テスト
さてこのような初期ロットのブロックがここにあるのはちゃんと理由があります。実はこのブロックは10月3日に発売されたクラレノリタケデンタルの新製品で、その新製品の加工テストのために頂いたブロックの中にLot.000001の製品がありました。
このブロックはクラスⅡの「カタナアベンシアブロック2 OE」です。
「カタナアベンシアブロック2 OE」はCAD/CAM冠インレーに特化した色調を持つブロックで、従来の製品よりも光透過性が高く、彩度の高い赤っぽい色をもっています。
左:トクヤマエステライトLTA3 / 右:カタナアベンシアブロック2 OE
普通、インレーが装着される咬合面中央はA3.5でも追いつかないぐらい彩度が高いオレンジ色です。またインレーの光透過性が高ければ、周囲の色調に溶け込むカメレオン効果を期待できます。
この製品の面白いところは、歯科技工所での在庫の管理に配慮されていることです。
つまり赤っぽく透明感のある色調にしたことで、ほとんどのシェードのインレーでもOE1種類で適用できるようにしてあり、これによって歯科技工所はシェードごとのブロックをストックしなくてよくなるので、在庫の管理が簡単になります。
研磨後 左:トクヤマエステライトLTA3 / 右:カタナアベンシアブロック2 OE
カタナアベンシアブロック2 OEでCAD/CAMインレーを製作してみると、高い光透過性とオパール性があり、非常に美しいインレーを作ることができます。
インレーの材質間の比較
せっかくですのでアベンシアブロック2 OEと設計同じデーターで現在臨床で使用できる各種材料でインレーを製作してみました。
大臼歯インレー:12%金パラジウム銀合金
大臼歯インレー:カタナアベンシアブロック2 OE
大臼歯インレー:トクヤマエステライトA3LT
大臼歯インレー:ジルコニアインレー アーゲンアンテリア(5Y)
このように同条件で比べてみると「目立たない」インレーを製作するためには、材質そのものの光透過性が最も重要な要素であることが分かります。
見た目の目立たなさでは金属はもう論外で、コンポジットレジンであるアベンシアとLTのブロックであってもエステライトが断然勝っていて、ジルコニアはたとえ高透光の5Yジルコニアでも、前2者と比べると白浮きしています。
「黒と白」の対比から「白と白の耐久性」の対比へ
やはりコンポジットレジンのもつ高い光透過性とオパール性によるカメレオン効果はインレー治療において非常に有効です。
我々歯科技工士の判断では、歯質と同化して目立たなければ目立たないほど良いインレーを作った、ということにしていますが、保険適用の材料でこれほど優秀な材料が使えるとなると、インレーの材料選択の構図に変化が起こるのではないかという懸念がわいてきます。
つまり従来のインレー修復では「保険の金属」と「自費の白いセラミック」という黒と白の対比でしたが、これが「白くて目立たなくて保険が効くCAD/CAMインレー」が出現したことによって単に「白い」というだけでは高額な治療費の対象に選ばれなくなります。
しかしCAD/CAMインレーに対してジルコニアが圧倒的に優位な点があります。それは表面硬さと曲げ強さが示す口腔内での耐久性です。
そこで今後のインレーの材料選択では「目立たなくて保険が効くCAD/CAMインレー」と「耐久性のジルコニアインレー」という「白と白の耐久性」の対比に代わっていくものと思います。
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